無量寿寺 かきつばた

数百年の時を幾度も

「時は、平安」。在原業平(ありわらの なりひら)は、想ってはならぬ身分の高い姫を愛してしまい、京の都に身を置くことが出来なくなり、東の国へと旅に出たのであった。

 旅の途中、八橋でしばらくの間、旅の疲れを癒す業平「から衣 きつつなれにしつましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもう」(か・き・つ・は・た)

かきつばたで有名な八橋の無量寿、その無量寿寺の本堂の裏庭に、小さな塚があります。この塚は「姫塚」、「かきつばた姫の塚」とも言われています。

八橋川は姫と会った場所として、後に逢妻川といわれるようになりました。業平を愛していた姫は、別れの辛さを耐えきれず、密かに都を抜け出して、業平の後を追い八橋まで来たのでした。

業平は、はるばる自分を訪ねて来てくれたことに喜びを胸に抱くものの、姫の幸せを切に願い、折角逢えた二人ですが、業平はまた旅立ってしまうのでした。あとに残された姫は、悲しさと旅の疲れで病に伏してしまい、無量寿の村人の必死の看病も届かず、ついに姫は、池に身を沈めてしまったのでした。

姫が身を沈めた池には、かきつばたが美しく咲くようになり、「かきつばた姫」とよばれるようになりました。

時あたかも、かきつばたの咲きそろう時期、特に沢辺の原野池のかきつばたが素晴らしく、業平は、このかきつばたを無量寿寺の境内に自ら植えられ、この池を業平池というようになり、かきつばたの花の咲く頃になると、かきつばたの花が池一面に絨毯(じゅうたん)を敷いたように咲いていました。

「唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ」着続けて体になじんだ唐衣のように、その衣を永らく張っては着て、また張っては着るように、なれ親しんだ妻を都に置いてきたので、この美しい花を見るとそれが思い出され、都を遠く離れてはるばる来てしまった旅をしみじみに想う‥‥ 在原業平

「そして‥現在」ハ橋の歴史を現代へ受け継ごうとする、『八橋旧跡保存会』 9代目会長 近藤 喜弘さんにお話しを伺いました。

初代は昭和29年、近藤さんは保存会として、18年間活動を続けて来られ、町内会区長やOBなど総勢43名で八橋かきつばた園を守っています。しかし、メンバーの高齢化により、管理する事にも大変な苦労があるそうです。それでも、先代がなされてこられたことを守っていこうと、愛情を込めてコツコツと池の管理、草刈り、消毒、肥料などのお手入れをされています。

7年前、猛暑によって、かきつばたが9割ほども、病気にかかってしまった事があるそうです。急遽、京都からかきつばたの苗を8,000本ほど要請してもらい植樹されたそうです。現在では、かきつばたの種を拾い集め、種から苗を育てているそうです。今年は、1回目の花が4月末に咲き、見事な「かきつばた」の花を咲かせてくれました。

「どれだけ手を加えても、やはり自然のことなので、毎年咲くのを楽しみにしていますが、あたり一面に絨毯のように咲くかきつばたをご来場のお客様に見ていただきたい気持ちでおります」。

取材に伺いました際は、3回目の花が咲いていた頃でした。紫の色鮮やかに咲く かきつばたを見ることが出来て 緑もあり素敵な園庭で、久しぶりに時間を忘れて、のんびりと過ごすことが出来ました。保存会の皆様にも、突然お邪魔させていただいたのにも関わらず、快く引き受けてくださり、お昼休みの中、ご一緒に炊き込みご飯をご馳走になり、お抹茶をたてていただくなど、ご親切にしていただき、おもてなしを受けながらの取材は格別でございました。八橋かきつばた… 一本の花をじっくりと拝見しますと、本当に引き寄せられるほどに魅力がある花だと心から想いました。

また、来年、再来年…と かきつばたを観たい。そう思いました。一本一本の苗を植え込まれ、お手入れをされること どれだけ大変なことでしょう。人々によって大切に守られてきた「かきつばた」です。これからの「かきつばた」について私達も、何かお手伝い出来ることから始めていけば、より一層 「かきつばた」が守られていくのではないでしょうか。あの団体が、あの人が、ではなく私たちの心掛け次第だという、市民の方の声もありました。

かきつばたにまつわるエトセトラ

■かきつばたは、愛知県の花・知立市の花です

「伊勢物語」の中で在原業平が三河八橋においてめでたゆかりの花。昭和48年8月、市民からの公募によって決められました。

■ 東宮御所にお見えになられた、美智子様が「かきつばた」の絵が描かれた帯をお召しになられたこともあったそうです

■八橋かきつばたを描いた国宝「燕子花図」や八橋かきつばたの図は、尾形光琳作の名品中の名品です。

■ 伊勢志摩サミットにおいて「燕子花図屏風」が会議室で披露されていました。

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